東京医科歯科大学・首都大学東京・東京都市大学
女性研究支援についての鼎談
江原そうですね。男女共同参画に関連する施策と言うのは、意識啓発以外に、ひとつが職場(研究・教育など)の場面における女性研究者向け支援(採用や研究機会などに関するポジティブアクションなど)、もうひとつがその背景になる施策として教職員全体あるいは女性教員などに対するライフワークバランス施策、そして人権侵害などの問題に対処する人権施策、大体この4つの施策があると思います。ワークライフバランス施策はさらに、職業労働に対する支援(育児中の女性教員に対する研究支援員配備など)、休暇・休業制度(短時間勤務制度・一部業務免除制度など)、家事・育児・介護などの生活支援制度(学内保育園・ベビーシッター派遣など)の3つに区分できます。
女性研究者は、先程東京都市大学のプロジェクトでふれられたように、理工系分野で特に少ないという偏りがあります。それは、日本社会では、「男性は理系、女性は文系」という固定観念が強すぎるからかもしれません。なので東京都市大学の取り組みは、なかなかいいプロジェクトだと思います。また、分野の違いは問わず、研究者が研究するうえで一番大事な20代後半から30代、女性は結婚出産子育てと重なってしまい、研究が続かないことが多いのです。結果として雇用が継続できない。ですから女性研究者の比率を増やすために一番のポイントは、正規の教授職の方だけではなく、より若い方の様々な不安定な職、非常勤講師や任期付の特任助教などの職種において、キャリア形成に役立つ支援策を行うことが、とても重要だと思います。その意味で、保育園や研究補助員・支援員という制度は有効です。子育てや研究の一方でも、いろんな形で女性研究者に対して一時的に支援があれば、ずいぶん助かります。無論双方の方がもっと良いですが。また短時間正規教員職のようなもの、具体的には、75%教員・50%教員のような制度を作ることも、よいかもしれません。 何かそういう制度上の工夫がないとおそらく乗り切れないと思うんですね。いずれにせよ、こうした施策は、国立大学が先行しています。東京都市大学や、私のところの公立大学は、たとえば振興調整費に応募が少なかったり採択の数が少なかったりしておりますので、今後頑張らなくてはならないですね。
小川公立大学や、私立大学は、やはりハンディを持っているのでしょうか。
江原公立大学の場合は、予算措置は設置者である自治体が行うので、国立大学のようには、文科省の施策に対する感度が高くないのでしょうね。私立大学も同じく、基本的には独立予算ですので、どうしてもそういう意味で国の施策に従うということは少ないのではと思います。あと、その他の要因としては、規模があるようですね。大規模な大学はチャレンジするのですが、小規模大学はそこまで手が回らない。私立大学、公立大学で規模が小さい所は、なかなか施策も行いにくいようです。今後、男女共同参画を規模を問わず進めていくためには、規模の小さい大学に対しても、施策策定支援というようなことが、必要だと思います。